『ガン×ソード』相対化の果てに

感想

何度観ても、面白い。

面白いから何度も観る。

大好きなアニメをまた観たので、この文章を読んだ全ての人が観たくなるようなものを書きたくなった。ネタバレは無い。

『ガン×ソード』は2005年に放送されたアニメで、高校生の時に「2chロボットアニメ板民」が揃いも揃ってオススメしているので、観た。

経験として、いわゆる「見せ場」で本当に心が震えたのを覚えている。描写やドラマを積み重ねて積み重ねて、それらが全て「見せ場」のために配置されていた。

ああここが見せ場なんだろうな、と感じることは当時の少ない視聴経験の中でも存在した。

しかし、それは理性での判断と感覚での判断の二種類に分けられた。正確に言うと、どちらかの要素の比重が大きかった。

前者は、いわゆる伏線回収である。登場人物に問いを投げかけ続け、後に解答を出させる。論理的で、物語である。

後者は、感覚でのものなので説明は難しいが、「めちゃくちゃ動く戦闘」や「名ゼリフ」くらいのニュアンスだ。バラエティや動画サイトでまとめ動画が作られるような、短く魅せるシーン、つまり演出だ。

初めて観た『ガン×ソード』は(今ではたくさん好きな作品はあるが)、それらが重なった初めての作品だったかもしれない。

アクション、デザイン、設定と好きなところをあげるとキリがないが、優先順位を付けるならやはり構成、シナリオが最も優秀だと思う。トータルで観たのは3回だと思うが、見るたびに「これはすごい話だ」と構成の緻密さに驚かされる。

出来るだけネタバレにならずに言えるのは、この作品はサブタイトルにある通り「痛快娯楽復讐劇」であることだ。

しかし復讐劇を普通にやってしまうと、娯楽としてある程度はウケても“痛快な”娯楽にはならない。

「誰かが殺されたから」「誰かを殺す」という行為が復讐である以上、「復讐は正しい」というものを正義にするのは難しいからだ。主人公がダークであれば可能だろうが、それは“痛快娯楽復讐劇”にはならない。

ならどうするか。結論から言うと、この物語は「復讐は正しい」という立場は取っていない。根底にあるのは何かの正義ではなく、「自分で決めたことをする」という自由なのである。

巧妙なのは、台詞には何度も「正義」や「正しさ」という言葉は出てくるが、「自由」は出てこない。代わりに「自分で決めろ」というという言葉が何度も繰り返される。

いざ終局が近づいても、主人公たちは恐ろしいほどにお互いの意思を尊重する。復讐という行為には理解をしても、「主人公の復讐」を手助けしようとはしていない。主人公に共感も同化もしない。

決して、ただの一度も、「こいつが許せないからみんなで倒そう」とはならない。「俺はこいつが許せない、だから前に進む」という考えを持った上で、利害の一致で一緒にいる。

敵陣営の描かれ方も非常に対照的だ。

詳細は控えるが、彼らは共感と同化が根源である。「これは正しいと思う」と思うこと自体は同じだが、それゆえに仲間に強く共感し、同化を望んでさえしまうのが今作の敵陣営だ。

正義を掲げ、むしろ正義らしい台詞を発するのは彼らの方だ。しかし反正義、アンチヒーローものなのかというとそうでもない。

これがまず、正義の相対化なのである。相対化こそが自由の前提となるからだ。

そして、さまざまなものが相対化されている。特筆すべきは、復讐という行為ですら肯定されていないことだ。もちろん否定もされていないが、復讐が良くないという考えからも逃げずに、迷いながら主人公は進む。

自由な世界だからこそ、個性的な人物の選択が楽しく、そして尊く映るのである。

これ以上はネタバレを避けると味気ないことしか言えなくなるので止めるが、とにかくこの物語はどの正しさにも重心を置かない。

だから復讐劇として成立しつつ、安易に作品として単一のメッセージを発しない。

そしてその自由と相対化は台詞には表れないため、説教臭くない。

各々が考え、動く、その立場や言動が(間違いなく意図的に)奇跡的なバランスで「自由」を体現している。

故に“痛快”な“娯楽”の“復讐劇”なのである。

よくあるネットの文脈で「復讐を肯定するからガンソードが好き」という言葉が見ることがあるが、せめて「復讐を否定しないから」にして欲しいと切に願う。

長々とネタバレを薄めて前提を語ってきた。しかしこれはあくまで構造の話で、好きなところはたくさんある。感覚での判断によるものだ。

主人公ヴァンは魅力的で、復讐を応援してしまう。アクションも随所にアイデアが組み込まれ、全話通して退屈させない。作画は美麗で一切崩れない。構造以外にも良い伏線や描写はたくさんある。

正直、観て面白かった人にとってはこの上なく物足りない感想だったろう。

だが、たとえこの作品のカラーが合わない人でも、「自由」についての緻密な構造には唸るはずだ。贔屓もありつつ、そう信じるほど好きな作品であるからこそ、こういう推し方をした。いつかネタバレ有りで何か書いてみたい。

タイトルとURLをコピーしました