日刊アルバムレビュー②THE WORLD IS MINE/くるり

音楽を聴きましょう。

くるり – ワールズエンド・スーパーノヴァ

今回は、俺がくるりで一番聴いたアルバムを。一般的な評価だと、次作「アンテナ」の方が人気があるのかもしれないが、実は高校生の時にはじめて「アンテナ」を聴いたときはカントリーの匂いすら漂うゆったりした回帰的なロックンロールがあまり肌にあわず、こちらのアルバムばかり聴いていた。

確かに、このアルバムには単体で耳に残る曲は少ないかもしれない(リード曲を除けば)。くるりにしては歌モノが少ないし、打ち込み主体で暗い印象の曲も多い。しかし、このアルバムは正にアルバムとして聴いたときにその良さを知れるのだ。

くるり岸田というコンポーザーはコンセプチュアルなアルバム制作の名手で、これほどまでにアルバムごとに色を変えながらも的確にテーマ性を持ったアルバムを世に出せるのは本当にすごい。同時代に活躍したバンドと比較しても少なくともその能力だけは突出しているといっていいだろう。それが故にビートルズがごとき「マイ・フェイバリット・アルバム論争」がファンの間では繰り広げられることになるのだが。

本アルバムに話を戻すと、音響の面で言えばこのアルバムは前作「TEAM ROCK」によって培われたエレクトロニカの傾向をベースにくるりらしいギターロックが展開される。前作の、特にリードトラックで顕著だったニューウェイヴ的な多幸感あるエレクトロニカというよりは、むしろクラウトロックばりの冷たい電子音が印象的だ。

このアルバムで一貫して語られるのは「淡々とした旅の情景」である。#1 GUILTY「いっそ悪いことやって/つかまってしまおうかな」内省的な自己嫌悪と共に始まるこのアルバムは、#3 GO BACK TO CHINAで遠い大陸の摩天楼に思いを馳せ、#4 WORLD’S END SUPERNOVAではトランス風味の打ち込みの中に孤独な青年の自我が言葉少なに綴られる。#6 アマデウス、#8 MIND THE GAPで語られるのは異国の肌触りだ。

主人公の想いは旅のなかで淡々と募る。彼は#10 男の子と女の子ではじめて他者に視線を向ける。彼は無邪気にはしゃぐ子供達に自分を重ね合わせ「ロックンローラーになれよ/欲望を止めるなよ」と語りかける。そこには、これまで淡々と旅を続ける主人公に内在する熱情が示唆されている。その感情が「THANK YOU MY GIRL」で爽やかなギター・ロックとして昇華される。その移り変わりがあまりに鮮やかすぎて、この曲が再生される度に俺は涙ぐんでしまう。

そして終盤「砂の星」「PEARL RIVER」で旅は終わるでもなく、静かに、ただ静かに続いていくことが暗示され再生が終わる。

このアルバムを聴き終わったとき、俺はまるで一冊の小説を読んだかのごとき複雑な感情の岐路を辿る。

音作りをみても、歌詞をみてもこのアルバムは私たちリスナーに歩み寄ろうとしてはこない。チルダウンして淡々とリズムパターンを繰り返す曲も多いし、歌詞も共感性が高いものが置かれているわけではない。そんななかでアルバムを通してその全体像を掴みとる行為は、まさにひとつの物語を読み解く行為に他ならない。

このアルバム、超名盤です。俺にアルバムの聴き方を教えてくれました。

やはり、アルバムは捨てたものではない。

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