日刊アルバムレビュー⑥イラつくときはいつだって/オレンジスパイニクラブ

こんにちは。

オレンジスパイニクラブ『37.5℃』Music Video

今日は、茨城発新進気鋭のロックバンド、オレンジスパイニクラブの(バンド改名後の)1stアルバムを。

このバンド、個人的にはライブバンドという印象があまりに強くて、CD音源をしっかりと顧みてなかったと思いこの機会に聴き込んだのだが、(めちゃくちゃ失礼な物言いだが)思ったよりもはるかに緻密に構成されたバンドサウンドのように感じた。

ライブにおけるオレンジスパイニクラブのパフォーマンスの熱量は完全に銀杏BOYZを代表としたジャパニーズ・青春パンクのそれ(特に、童貞ズ時代の曲など)なのだが、CD音源では勢いに任せた衝動は鳴りを潜め、andymoriのごとき(曲によっては遠い向こうに忌野清志郎すらも見据えたような)ゆったりとした余裕を感じるフォークっぽさを身に付けていることに驚かされる。その一方で歌詞に関しては童貞ズ時代と変わらぬ青さを放ち続けているのだから、最近の躍進ぶりも納得と言えるだろう。

アルバムは、先行したMVがスマッシュヒットとなった代表曲#1 キンモクセイで始まる。「君のイメージ金木犀よ/香りまで妄想しちゃうなんてバカね」聴いてる方が恥ずかしくなってくるような青い歌詞も、あまりにも純粋無垢なバンドサウンドとメロディと一緒なら、なんとなく受け入れてしまう優しさがある。ただ恋愛の歌詞だけでなく、ひと夏が過ぎたあとで初夏の風景を思い出す、という時間の経過を人間関係の進展と重ね合わせるような思いがけず文学的で巧みな情景描写が光る。#2 東京の空は一転してオルタナティブ色の強いアレンジがややハードな印象を与えるナンバーで、気だるげな歌唱とドライで達観したような歌詞が上京したての彼らの心境をまざまざと感じることができる。改名前よりのライブの定番曲#3 タルパはカントリーらしいリズムパターンからAサビBサビでガラッと印象が変わって感傷的な別れを歌った名曲。思えば、オレンジスパイニクラブというバンドのわかりやすい特徴ともいえる急展開を迎えるコード進行とリズムパターンはこの頃から培われていたものなのかもしれない。

続く#4 37.5℃はこのアルバムのリードトラックにもかかわらずゆったりと内省的な歌詞が綴られるミドルテンポの曲で、あえてこの曲をリード曲に選んだことは彼らの今後の方向性を決定付ける予感がしてならない。

リード曲に続いて穏やかなテンポで展開される#5 デイリーネイビークレイジー、#6 眠気を経てアルバム最後の曲は、こちらもライブ・キラーチューン#7 敏感少女。先ほど、CD音源だとライブとはまた違った印象で~などと書いたが、この曲に関してはまるでライブのような演奏で、サビの度に高まる感情に呼応して加速するドラミングと荒々しくがなりたてるボーカルは、まるでライブアルバムのような臨場感を与えてくれるし、このバンドの出自がパンクであったことを思い出させてくれる。

全体的に小綺麗にまとまりがちだったアルバムを、最後の曲によってぶっ壊す構造は見事だ。

青さだけじゃない、初期衝動だけじゃない新境地を確立し、オレンジスパイニクラブへと進化した彼らの今後が楽しみでならない。

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