日刊アルバムレビュー⑦CHRONICLE/フジファブリック

日刊なのに5日ぶりです。

スマホがぶっ壊れたりなどでゴタゴタしていたので許してください。

フジファブリック (Fujifabric) – Sugar!!

今日は、フジファブリックの4thアルバムを。

前作までの、プログレやハードロックなど、様々なスタイルのロックを試行錯誤をへてポップスの形に落としこもうとするミクスチャーなスタイルや、バンドらしく瑞々しい音作りが特徴の若さを感じるアレンジは鳴りをひそめ、The Whoより受け継がれてきたその名の通り力強くポップなギターサウンドが特徴のパワー・ポップへの強い憧れを感じるコンセプチュアルなアルバムとなっている。

これまでのフジファブリックの代名詞ともいえる変態チックなアプローチや、空間を意識させる季節の描写はほとんどないといっていいが、それを補ってあまりあるポップさで満ち溢れたエネルギッシュな一枚。

全15曲、全曲において作詞作曲、アレンジまで努めあげたフロントマン志村正彦の執念めいた才能の結実がこのアルバムであり、空間の隅々まで詰め込まれたギターの歪みと、的確に若者の精神を切り抜く歌詞の描写力は、ストックホルムという異国の地で雪に閉ざされたレコーディングが少なからず影響しているように感じられる。

#1 バウムクーヘンは、軽やかなキーボードリフから一転、重々しく歪んだギターが特徴的なイントロで、このアルバムがこれまでのフジファブリックの作品とは全く違う方向性で製作されたことが早くも知らされることになる。同時に、「すぐに泣いたら損する気がして/誰の前でも見せません/でもね何だか複雑なんです」の歌詞はこれまでの楽曲と作曲の面でも異なるアプローチであることがわかる。これまでのフジファブリックは、常に美しい情景描写と共に繊細な心の動きを歌ってきた。「茜色の夕日」や、「若者のすべて」などはいい例だろう(もちろん、今作に近いアプローチの楽曲は、前作『TEENAGER』でも、「ロマネ」や「TEENAGER」などで見られるが)。

#2 Sugar!!は先行リリースされたシングルからの収録ということもあり、これまでの楽曲群から俯瞰しても連続性を感じられる爽やかなギター・ポップ。#3 Merry-Go-Roundはオールドスクールな香り漂うギター・ロックで、比較的簡素なギターに比べると自在に動きまくるリズム隊が際立つ。続く#4 Monsterもロック要素強めのナンバーで、Aメロのまくし立てるようなボーカルがかなり実験的。

#5~#9まではどれもミドルテンポの曲が並び、一見すると少し退屈な進行に思えるかもしれないが、#6 エイプリルはこのアルバムでは珍しく季節の情景を切り取った名曲で、相も変わらず内省的な語りと淡々としたメロディからのCメロで爆発する感情の高まりは見事。

さらに曲のテンポは落ち、ギターの歪みに満ちたイントロで始まる#10 Anthemへ。下手したらボーカルを潰してしまうのではないかと思うほどのエレキの轟音は、まるで内省的な歌詞のバラードを歌う気恥ずかしさを隠しているかのようだ。「鳴り響け/君の街まで/闇を裂け/このアンセムが」あまりにストレートな歌詞や、大サビで半音上がる構成はもはや青さすら感じられる仕上がりなのだが、それをギンギンにとがったギターサウンドが中和して非常にセンチメンタルな出来になっている。

#11 Laid Back、#12 All Rightは一転ハイテンポでテンションの高い2曲で、どちらもこれこそパワー・ポップだ!と標榜して憚らないくらいコテコテのパワー・ポップで、ロックンロールへの限りない敬愛を表明した歌詞や、vo.志村のシャウトは古きよきロックを思い出させる。

長い長いアルバムの最終部は静かな曲で構成される。#13 タイムマシンは、あまりに切実な心情の吐露が、ピアノの伴奏とわずかなストリングスだけで彩られるバラードで、個人的にはフジファブリック屈指の名曲。続く#14 ないものねだりも、志村正彦の非常に個人的な心情を歌ったボーカルが主体のアレンジになっており、自虐的にすら聞こえる繊細な心情がどこまでも儚い。

アルバム最後の曲# 15 Stockholmは、静かに淡々と進行するバラード。「雪が積もる/街で今日も/君の事を想う」フジファブリックは前作で商業的な成功をおさめ、それこそ海外でレコーディングできるほどの地位と、名声を手にした。しかし、どこまでいっても、志村正彦の心は満たされることはない、ストックホルムの街ですら、「君」に想いを馳せてしまうのだから。

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