ウルトラマンが多過ぎる『劇場版ウルトラマンタイガ ニュージェネクライマックス』

※ネタバレがあります

出典:https://m-78.jp/taiga/post-4419/

毎年2クール分はテレビ放送をして春に劇場版で総決算をするウルトラマン。しかしコロナウイルスで公開が延期し、ようやくこの時期に公開となった。まずこの映画の公開を祝いたい気持ちでいっぱいだ。実はウルトラマンの映画を劇場で観るのは初めてなので、無事に観られて嬉しい限りである。

さて、そんな劇場版『タイガ』の感想を書いてみよう。

前述の通りこの映画のはテレビで放送された『タイガ』の総決算としての側面を持っているのだが、同時に「ヒーロー大集合映画」としてのそれも併せ持つ。サブタイトルにある通り「ニュージェネレーション」と呼ばれるウルトラマンギンガ以降の新世代ウルトラマンがオリジナルキャストで集合するのだ。

さらに、テレビ版ではあまり前面に出てこなかったタイガの父・タロウも満を持して登場し、旧友であり黒幕のウルトラマントレギアと決着をつける…というクライマックスに相応しい盛りだくさんの映画なのである。“闇に堕ちたタロウ”のCMで半年ほど引っ張ることになってしまった『ニュージェネクライマックス』、幸い当日で観ることができた。

この映画を構成する軸は大きく三つに分けられる。

  • 『タイガ』のキャラクターの総決算
  • ニュージェネウルトラマンの集結
  • タロウのタイガとの親子関係、そしてトレギアとの因縁の決着

上映時間は75分だったのだが、これはかなり無理があったと思う。

『タイガ』の総決算


総決算として劇場版を思い返すと、これはなかなか良かったと思う。冒頭がとても良かった。「3人のウルトラマン」を活かした戦闘をかましつつ、どうもキャラクターの薄い印象のあるヒロユキに調子付いた台詞を放つことで「危なっかしい熱血バカ」というイメージをあらためて提示する。イージス内での少しぎこちないやりとりも、少し補正が入るがこれはこれで懐かしい気持ちにさせてくれる。

ただ、肝心の「タイガたちトライスクワッドとの別れ」という筋はうまく乗れなかった。何せ、冒頭でダダが巨大化して街を襲っているので、防衛隊の存在も無さそうなこの地球ではタイガたちは居た方が良いのでは…?と不安になってしまった。タイガは宇宙人が地球にこっそり暮らしている世界観で、少しずつ理解は進んでいるとはいえ宝石を盗んだ挙句にキレて巨大化する宇宙人がいる以上もう少しウルトラマンの力を借りたいところだが……

また、場面のタイミングも少し変だった。詳細は後述するが、ジードに檄をもらいヒロユキがタイガを励ますシーンはとても良かった。しかしその直後にタイガがヒロユキに別れを告げるのはどうも感情が追いつかなかった。そこでは危なっかしいヒロユキがトライスクワッドに心配されるのだが、気遣われた直後に気遣うタイガのメンタリティはよく飲み込めなかった。

全体的に尺が足りない感じはするが、それでも印象に残るシーンはそこそこにあり、『タイガ』の劇場版としては観たいものは割と観られた。トライスクワッドの3人の共闘が観られたのも最後ならではだろう。

ニュージェネ、大集結!


ヒーローが集合する。それだけでもワクワクする言葉だ。自分はニュージェネを全て視聴はしていないが、予算の少ないスタートから徐々に人気を獲得しウルトラマンシリーズの復権、現在人気を博す『Z』まで繋がっているとは聞いている。

『ルーブ』の湊兄弟の気楽なやりとりや、ドンシャインへの朗らかな表情とヒーロー然としたカッコいい表情を見せる『ジード』のリク。『オーブ』や『エックス』も見せ場が用意され、それぞれアクションと機械弄りで個性を見せていた。『ギンガ』組は絡みが薄かったが、こういった映画では色々大変だったかもしれないというのもわかるし、ヒカルの号令と共に一斉に変身するのは非常にアツい。

特にジードとのやりとりは良い。父と戦うことを恐れるタイガに対し、父と戦えたのは仲間がいたからと励ますリク=ジードの先輩らしさ。ゲストにとどまらない感慨深い絡みだった。湊兄弟との話も良い意味で肩の力が抜けていた。上映後の応援メッセージもこの組み合わせでなんだか相性が良かったように感じる。まあイサミが霧崎相手にめちゃくちゃ滑ってたのは少しかわいそうだったが…

ところで変身能力を返すシーンがたびたび挟まれたが、あれが中途半端にあるせいで複雑な気持ちが残る。特にヒロユキと『ギンガ』組の絡みが事実上「貸してたあれ返してよ」のみなのはただただ惜しい。しかも顔を合わせてすぐである。

タイガはニュージェネレーションの力を集められ、ウルトラマンレイガにパワーアップする。デザインは融合態という感じでかっこいいのだが、ヒロユキとしっかり絡めたのがジードだけなので文脈が乗らないのが残念だ。おそらく、返した力をもう一度貸すという構図なのだが、その間が無いせいでアツくはならない。レイガへの音頭をとるのがタロウなのもつくづく惜しい。ここにギンガとのやり取りが一つでも挟まっていれば…と思ってしまう。

派手なギミック付きの戦闘シーンや『ギャラクシーファイト』で贅沢にやってくれたので、一言二言絡みが欲しかったが、スケジュールか尺の都合か……繰り返すがとにかく惜しいところだ。中盤までの、それぞれのウルトラマンが登場しつつ個性を見せていくのはわかりやすく楽しいシーンの連続だったので、最終決戦に何か乗せられれば、と思うばかりである。

混沌のトレギア


子どもの頃にレンタルで何となく観ていたので、昭和ウルトラマンの中ではかなり自分的に思い入れが強いウルトラマンタロウ。そして、旧友であり黒幕であるトレギア。トレギアはタロウやタイガを傷つけるために様々な事件を画策していた。

今回語られたトレギアの言葉を聞くに、彼はとにかく混沌を求めているという。光も闇もないまぜにした混沌こそが素晴らしく、トレギアは光を知るために闇に手を出したとのことだ。

…やっぱり、トレギアは全体的にふわっとしている。思想も作戦もふわふわだ。光も闇も、というのは『オーブ』や『ジード』で描かれていたテーマだが、トレギアが具体的に何があって何を求めているのかはとにかくわからない。光も闇もあるから人間は愚か/素晴らしい。このメッセージはヒロユキも同様の内容を語っている。結局何が問題でどう解決したのかがわからない。

一応補足すると、ヒロユキやタイガのすれ違いが“混沌”を象徴しそれを乗り越えていけるということだと思うが……そうするとトレギアが求めるものが“嫌がらせ”でしかなくなってしまうような気がする。

タロウの話に移ろう。正直に言うと、この映画のタロウでは笑ってしまった。トレギアの策略によりタロウは闇に堕ちるのだが、CMで擦られたシーンは受け手の問題だが、ヒロユキたちがタロウを探しているシーンで普通にどこかで巨大なまま猫背で待っているのはめちゃくちゃ面白かった。話の都合かウルトラダイナマイトを登場してすぐに撃ち込むタロウ、闇の力に耐えるタロウ、真剣な空気も相まってなぜか笑ってしまう。

とはいえ、タイガは仲間との絆で闇に堕ちた父を抑えることに成功する。正面きっての対決ではないが、タイガが手に入れたものの再確認としては相応しい相手だったろう。タイガのタロウへの心情や、トレギアとタロウの確執はもう少し知りたかったが。

多いぞ、ぼくらのウルトラマン!


まず物理的に多い。今回最終決戦時点での最大値は

  • ギンガ
  • ビクトリー
  • エックス
  • オーブ
  • ジード
  • ロッソ
  • ブル
  • グリージョ
  • タイガ
  • フーマ
  • タイタス
  • タロウ
  • トレギア

なんと13人もいる。(融合態はもっといるが含めていない)

ウルトラマンの集合では場所が分かれたり遠い惑星ということもあったが、今回の集合場所は地球上である。そこに怪獣が6体ほどいるわけで、誤差はあれど20弱の巨大生物が争っていたわけだ。いくらなんでも多過ぎる!怪獣5体がまとまって大爆発が起きたの、時勢もあって気が気じゃなかったよ!

そしてプロットとしても過密だ。ニュージェネレーション集結とタロウ・トレギア・タイガの関係はかなりバッティングしている。お互い尺を食い合う中で、息子タイガの成長・父超えは正直ニュージェネ集結で薄まっていたと思う。

テレビ本編の時点で「タイガとヒロユキのバディ」と「タイガ、フーマ、タイタスのトライスクワッド」の描写が絶妙にバッティングしていたのに、そこに二つウルトラマンの関係が乗っかってくれば、75分では過積載だ。

おいしい要素が盛りだくさんの映画だ。見どころはたくさんあり、それらは個々でもっと広がりそうなのだが器に収まりきらず溢れてしまっている。しかしきっちりとクライマックスの風格はある。これは補正に過ぎないが、ようやく観れたという気持ちだけでもかなり満足してしまっている。夏に入るこの時期に“混沌”に包まれた決着を劇場でしっかりと見届けられ、どこか晴れやかな気持ちになれた。

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